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市川春子『宝石の国』を君はもう読んだか?

2013年09月30日
市川春子という才能を見逃していないか?
もし見逃しているなら、断言しよう。
漫画ファンとして損をしている、と。



 の中にはビザール(英:bizarre)なものが好きだという因果な趣味を持った人間がいる。

 ビザール趣味というのは、なんとも説明しづらいが、見世物小屋で満たされるような奇異なものを愛でるような感じと言えようか。
 かく言う私の場合は、『幽☆遊☆白書』の躯に関するエピソードを読んだ時にビザールという名の種が撒かれ、『BASTARD!!』を読んで芽を出し、大暮維人『NAKED STAR』で大きく花開いた。こうして書くと、なんとなくイメージが湧いたのではないだろうか?
 ただ誤解して頂きたくないのは、痛いとかグロが好きという訳ではないということだ。腹パンとかリョナとは大分違う。(というかあのエゴ丸出しの嗜虐的な性嗜好はよく分からん)

――――――閑話休題――――――

 そんな私が市川春子さんの短篇集『25時のバカンス』を読んだ時には心が躍った。どの作品をとっても、漫画として面白いだけでなく、ビザール趣味を大変にくすぐってくれたからだ。
 表題作「25時のバカンス」は、深海生物の研究者である姉はひょんなことから体内に深海生物を寄生させることになった。実は彼女はひと回りも年が離れている弟に対して持っている歪んだ愛を持っており、その偏愛をカタチにするために弟の二十歳の誕生日に体の中の生き物の力を借りて体内で作った左目をプレゼントする…。文章にすると即入院させられそうな感じだが、これがまた最高に面白いのだ。貝殻の成分で外殻をまとっただけで、中身はそっくり空っぽの姉が見せる恥じらい!スパシーバ!特徴的なコマ割りも感情の余韻を醸す助けになっており、物語に没入させてくれる。

 いつも通り前置きが長くなってきた所で本題。

 今回の記事で取り上げるのは、市川春子さんの最新作、アフタヌーンで絶賛連載中の『宝石の国』だ。

公式の紹介文を張っておく。

今から遠い未来。地上の生物が海に沈み、海底の微小な生物に食われて無機物となり、長い時間をかけて結晶となった宝石生命体、のような存在が生まれた。そ の宝石のカラダを持つ28人は、彼らを装飾品にしようと襲い掛かる月人(つきじん)に備えるべく、戦闘や医療などそれぞれの持ち場についていた。月人と戦 うことを望みながら、何も役割を与えられていなかったフォスは、宝石たちを束ねる金剛先生から博物誌を編むように頼まれる。漫画界で最も美しい才能が描 く、戦う宝石たちの物語。

 『宝石の国』の1巻が出版されるにあたっては、アニメーションまで制作され、アフタヌーン編集部も強気で売りにかかってきていることがうかがえる。

 この漫画を読んで私は是非とも色々な人に読んで欲しいと心の底から思った。面白い、本当に面白いのだ!なので、特に面白いと私が感じたポイントを取りあげ、どれだけ惚れこんでいるかを伝えたい。


1.アイデアが奇抜で飽きさせない


 何度も読み返したくなる漫画と一度読んだだけでほっぽり放しになる漫画との間にある違いは何か?それは”単調なストーリー展開”である。一本道でただ単にワンアイデアを推し進めていくストーリーは簡単に頭の中に入ってしまう。次に読んだときに前回読んだときと同じ気持ちしか抱けないようでは、何度も読みたいとは思えない(いわゆる日常系や訥々と進むことに意味のあるストーリーの漫画を否定するわけではないのであしからず)。

 その点、本作は実にいろいろと趣向が凝らしてある。

 先の引用にもあるように登場人物は28人。その各人に実在する宝石の名前が割り当てられている。ダイヤモンド、ボルツ(黒色ダイヤモンド)、モルガナイト、ヘリオドールなどなど。そして、面白いなと思ったのは、それらの鉱物の特徴がそれぞれのキャラに反映されている所だ。つまり、モース硬度(石の硬さ)や劈開(へきかい:特定の方向に割れやすい)といった性質が引き継がれている。月から訪れる月人たちとの戦闘でこの性質は活かされてくる。

 他には、宝石の体を持ち半不死となった彼らには生殖の必要がおそらく無い。なので、作中では性差が非常に曖昧になっていて、衣装は男性・喋り口調は女性、でも一人称は”僕”だったりする。同胞愛に溢れる彼/彼女たちは常に二人一組で行動するが、彼らの間に恋が芽生えたりするのかという点も興味が尽きない。1巻では主人公フォスフォフィライトのストレートな気持ちに赤面するシンシャが見られたりするから、あり得そうだ。

 また、月より訪れる月人も謎にまみれていて興味深い。月人たちはアクセサリーにするために彼らを襲うのだが、そもそも月に住んでて、斃されると霧状になって消える月人はいったい何なのだろうか?気になって仕方が無い。それを言うなら、人間はどうなってしまったのかという点も気になる…。


2.独特で大胆なコマ割りが印象を強める


 市川春子さんの描く漫画は、すべて長方形のコマで構成されている。

 
アクションシーンがあるのに、斜めに割ったようなコマが無い。そして、あまり擬音が使われない。必要最小限の擬音と方形のコマから私が感じたのは、静けさだ。それも耳がジーンとなって来るような痛いような静けさだ。地球(おそらく)の遠い未来が舞台で、さほど大きくない島の上にたった28人で暮らす淋しさ。

 ところで「方形で区切られ静けさに満ちているのなら、アクションは大丈夫なの?」と心配に思う方がいらっしゃるかもしれない。ご安心召されよ。方形のコマに大胆な筆致で描かれる宝石たちのアクションは、時にコマの外に飛び出し、視点は正面・背後・俯瞰とめまぐるしく変化し、目を楽しませてくれる。


3.宝石で出来た体という”ビザール”なもの

 この記事の最初の方を読んでくれた方は、ビザールとは大体”奇異なものを愛でる趣味嗜好”ぐらいに理解して頂けたかと思う。ではいったい、『宝石の国』ではなにがどのようにビザールなのか?

 しつこいようだが、彼らの体は宝石=鉱物で出来ている。石と聞くと硬いイメージがあるが、もちろん石によって硬さが違ってくる。その違いを表すひとつの指標がモース硬度である。例えば、主人公フォスフォフィライトのモース硬度は3.5で非常にもろい。そのため、硬くそして堅い他のキャラと接触したり、衝撃が加えられるとすぐに割れてしまうのだ。

宝石の国_フォス(←割れてしまったフォス 『宝石の国』第1巻P.28より)

 しかし、彼らはそもそも微小生命体が作り出した、言ってみれば微小生物の巨大な集合体。つまり珊瑚みたいなものなので、割れようが足が無くなろうが腕がポキリと折れようが、死なないし肉体的な痛みというものを感じない。こんなにぐしゃぐしゃで服を突き破らんばかりに尖った破片に割れている状態でも平気で喋り、くっつければ元の通りになる。
 砕けて破片になった姿は大変痛々しいはずなのに、中性的な容姿をした10代半ばから20代前半にしか見えない彼らが生きたままそういった状態になっているということに、ビザール魂が鷲掴みにされた。

 もうひとつ、1巻で最も素晴らしいビザールさを感じさせてくれるキャラ、シンシャについて語っておこう。シンシャは体から毒を流し、その毒を用い月人と闘うのだが、その毒を指先、そして口中からも噴出させる。

宝石の国_シンシャ(←毒を噴出させるシンシャ 『宝石の国』第1巻P.52より)

 誰よりも闘いを嫌い、噴出される毒のため仲間ともいま一つ馴染めず、一人夜を彷徨うシンシャ。そんなシンシャが嫌がりながらも、闘うために仕方なく大量の毒を吐きだす姿は”いびつ”そのもの。また毒を噴出した直後の紅潮した頬と疲れたように傾いで立つ姿は実に淫らでビザールだ。

 そして最後に、月人の容姿がある。これはまず画像から見てもらいたい。

宝石の国_月人(←月より”宝石”たちを狩りにくる月人 『宝石の国』第1巻P.11より)

 仏教の仏のような怪物を中心に天女の姿をした兵隊を引き連れやってくる月人。これはもうフリークス趣味をも満足させるビザールさで、最初に見たときはあまりのインパクトに度肝を抜かれた。
 
加えて月人は、まったく音を発しない。無音でやって来て、斃されれば霧散し、宝石たちを斃した時はお椀に欠片をつめて持ち返る、この不気味さ!最高だ。


 というわけで、いかがだっただろう?未読の人は私のこの記事で読みたくなっただろうか?ちなみに、あまりに『宝石の国』が好き過ぎて、ブログで更新してやろうと思ってもなかなかどうして切り口が見つからず、発売より数か月を経ての更新となった次第である。
 最後に公式プロモーションビデオを張っておこう。私の紹介記事を読むより、100倍読んでみたいくなるはずだ。


それではみなさん、次の更新でお目にかかりましょう。Twitterのほうはほぼ毎日なにかしら呟いておりますので、そちらもヨロシク。

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