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最近読んだ本の感想 vol.6

2011年08月13日
どうも、お久しぶりです。いやー、暑いから更新サボってました!すいません。あと、私生活で何かと忙しかったのもあるんですけどね。とにかく、リハビリも兼ねて久しぶりに最近読んだ本をちょっとばかしの感想付きで紹介したいと思います。

・大森望責任編集『NOVA5』

 もはやSF者の中では定番の短編発表媒体となった感があるSFアンソロジーの5巻目である。今回参加されている作家を羅列すると東浩紀/伊坂幸太郎/石持浅海/上田早夕里/須賀しのぶ/図子慧/友成純一/宮内悠介(五十音順/敬称略)と"ベストSF2010"で見事1位に輝いた上田さんから、なにかと行動がいい意味でも悪い意味でも話題となっている東さん、デビューしたての新人から半分行方不明の作家まで相変わらずバラエティに富んだ作家陣である。さすが大森望さん。

 さて個別の作品に移ると、上田早夕里「ナイト・ブルーの記録」は海洋SF。海洋有人探査機でキャリアを積んだ霧嶋恭吾が、無人海洋探査機と非浸食型神経接続装置を通じてワイアードし探査/操作を行う事で、無人探査機が将来自分で問題を解決することが出来るようになるための、経験値を上げるためのオペレータとして抜擢されるが、操作を続けるうちに霧嶋の精神に異常が発生するようになる…、といったストーリー。人間と機械の界面が浸食され新人類とでもいうべき人間が生まれるというのは、士朗正宗『攻殻機動隊』で草薙素子がネットワークから生まれた自称生命体である通称"人形使い"と融合することで人類の進化の階段を1段上がったようにポストヒューマンSFともとらえられるが、今作はそこまでは描かずにその一段上がる寸前の、人類の前日譚であると私は判断した。短編集『魚舟・獣舟』を読んだ人なら分かると思うが上田さんの文章はどこかホラーめいた所を感じさせる(テーマその物がストレートにホラーの場合もある)。今作も人類の夜明けだ!と感じさせるような明るい側面はあまり感じられず、その後の人類の前途多難さを臭わす、深海の暗さを心に落すような陰がある。上田さんの魅力が溢れている作品だ。須賀しのぶ「凍て蝶」は、ある時街で父が描いた山の絵を売っていたら、いたくその絵を気に行ったヨールと名乗る見た目はパッとしない女性と知り合ったことで非日常的な世界に次第に巻き込まれていく主人公の1人称で語られるファンタジー。街角でたまたま出会った女性に運命を感じ、その女性のために一生懸命尽くす主人公の愛あふれる行動は女性にはキュンと来るのではないだろうか。時に衝突あり、別れあり、和解ありで、SF色は薄いがロマンチック・ファンタジーとして楽しめる一作。友成純一「アサムラール バリに死す」は、題名からして『雨の朝巴里に死す』のもじりという事から想像がつくかと思うが、著者の実体験を交えて書かれたコメディチックな作品。作家・友成純一は作家人生にほぼ見切りをつけインドネシアで奔放な暮らしを送っていたが、ある時から長期間連絡が取れなくなった日本の編集者が怪しく思いインドネシアはバリ島を訪れてみると、そこで友成ことジュニチはアサムラールという現地の風土病に罹り死亡していた事を知る。その顛末はラップトップに残された原稿に残されていた…という物語。大森さんの解説によるとほぼ実体験であると言う事だが、まったくもって羨ましいけしからん生活をバリ島で送っている著者のこの作品は、東南アジアのエネルギッシュさとどこか日本人から見ると奇異にみえる生活様式が垣間見える怪作。自らを主人公に仕立て自叙伝めいた小説は数あれど、ここまで赤裸々にお下品さを開陳し、自分を笑えるネタに昇華させているものはそうそう無いんではなかろうか?しかし終盤あたりは急に真面目になって文明社会を批判してみたり、ホラー小説ばりの展開が待ち受けていたりと全く侮れない。私もバリ島で朝からビールで酔っ払い夜はチェウェとニャンニャンしたいものです。宮内悠介「スペース金融道」は「盤上の夜」で第1回創元SF新人賞の最終選考に残った宮内さんの書くスペース貸金取り立てSF。といってもタイトルから感じられるコメディ要素は主人公コンビの会話や、貸金の取り立て方法などに少々垣間見えるだけで本筋は大真面目なハードSF。アンドロイドが公民権を得て、人類が太陽系を飛び出して幾星霜。太陽系外の惑星、通称"二番街"で新星金融の取り立て屋として働いている有能なユーセフと平凡な"僕"の2人は、会社のモットーである<宇宙だろうと深海だろうと、核融合炉内だろうと零下百九十度の惑星だろうと取り立てる>というウシジマ社長が頷くのが見える厳しいものに則って行動するものだから危険が絶えない。ある時社内報で、アンドロイドが自らの体を捨て他アンドロイドの体を乗っ取ることで取り立てから逃げているという注意喚起を目にした2人は、その事件の詳細を調べていくうちに大変な事実に気付くことになる…、といったストーリー。これがデビューして4作目の作品かと驚くほどこれが読ませる。程よく散りばめられた奇想天外な出来事は可笑しいし、読者の投影としての等身大の主人公"僕"を出すことで世界設定の説明がテンポよくなされていて読んでいて難解では無い、金融工学と量子力学を合体させた量子金融工学というトンデモ理論をさも当たり前かのように語ったりアンドロイドの3原則を掲げそれを物語の中心に据えるところにハードSFさも感じた。やはり複雑な人生を歩んできた経験が活かされているのだろうか?今後も目が離せない作家さんの1人である。

 というわけで、掲載されている作品の半分、4作を紹介した。総括としては、今作『NOVA5』はあまりSFというジャンルの裾野を広げ過ぎてもいないし、序文で書かれているように今巻はほぼ全篇が50ページ前後というNOVAにしては珍しい構成だったしで、個人的にはちょうど良かった、ピッタリはまったかなと思う。あんまり長すぎてもアンソロジーを読んでる気分になりませんしね。



・ジェイムズ・エルロイ『獣どもの街』

 ミステリ界隈ではお馴染みらしく名前だけは知っていたジェイムズ・エルロイという作家。今回の『獣どもの街』が私にとって初めてのエルロイ作品だった。まず最初に、なぜ本作を購入するかに至ったところから語らせて欲しい。

 ブログでは漫画と小説の話しかしていないが、実は映画やゲームも好きだ。最近購入したゲームの中で面白かったのは『アリスマッドネスリターンズ』と『L.A.ノワール』の2つ。前者『アリス~』は正にマッドネスが示す通り、アリスの世界がグロテスクに、狂気溢れる世界として描かれたアクションゲームでアリスは可愛いし、世界は頭がおかしくなるような歪んだ世界だしで、とても満足したわけだが、ここでは『アリス~』の話がしたいのではない。そう、『L.A.ノワール』なのである。

 ノワール(Noir)とはフランス語で"黒・暗黒"を意味する単語であり、転じて暗黒社会を描いた作品の形容に用いられるようになった。『L.A.ノワール』、つまりL.A.の暗黒社会を描いたこのゲームはロックスターとチーム・ボンダイが作った作品で、これが強烈に面白い!簡単にゲーム内容を説明すると、DSの人気ゲームシリーズ『逆転裁判』に似ていて、プレイヤーは検事で無く刑事となって容疑者を尋問したりするのだが、これが舞台を1940年代後半のロサンジェルスに移すとどうなるか?暴力にドラッグ、差別・・・。煌びやかなハリウッドを擁するL.A.という街の裏側がこれでもかというほどリアルに描かれており、完全にハマった。というか、このゲーム、サスペンス映画好きやビザール殺人に興味があったりする人なら間違いなくハマる。そして、話はこのゲームが発売される前に戻る。発売前、ツイッターのミステリクラスタの間でも、話題となったこの作品。何故話題になっていたかというと、"ブラック・ダリア事件"を扱っているからエルロイファンは見逃せない!というようなものであった。最初は「ふ~ん、その事件を扱った小説があるのね。」くらいに思っていたのだが、ゲームをやり終って、これはその作者の本を読まねば!となった訳である。ではなぜ、<ブラック・ダリア>シリーズでは無くこの『獣たちの街』を買ったかというと、一応保険をかけた訳である。「この買った本がもし面白くなかったら?」これは読書好きの人なら思った事があるはずだ。だから連作ではなく1冊完結で表紙もカッコいいこの作品を選んだ。結果としてどうだったかというと・・・、メチャクチャ面白かった!なんだこれ?この文章、最高にクールで狂ってるじゃないか!しかも意図していなかったが舞台はL.A.!主人公は刑事!これはもはや運命を感じざるを得なかった。

 というわけで、私とエルロイとの出会いを語った所で内容に触れていきたい。『獣どもの街』は「ハリウッドのファック小屋」、「押しこみ強姦魔」、「ジャングルタウンのジハード」の3篇からなり立っており、主人公とヒロイン・舞台は3篇共に共通であるが、年代が違う。「ハリウッドのファック小屋」が1983年、「押しこみ強姦魔」が2004年、「ジャングルタウンのジハード」が2005年のL.A.が舞台となっている。

 主人公は犀をこよなく愛し犀ファッションに身を包むリック・ジェンソン。まずここからして犀の象徴でもある犀の角が怒張した陰茎を連想させることからこの刑事がどのような人物かは分かるかと思う。そしてヒロインはドナ・ドナヒュー。ダジャレみたいな名前だがこの作品では頭韻が異常なほど繰り返されているのでその一環だと思われる。ドナはハリケーンのような激しさを身に纏ったアメリカンセックスカルチャーの象徴でもあるPLAYBOYの表紙を飾りそうな、フェロモン溢れる女性だ。この2人は、生涯で3度だけしかファックしない。2人は愛し合っていたが、男の後ろについてくるようなタマではないドナと、女に人生を縛られるような生き方を選べないリックとの間の愛は、愛の形は人それぞれなのでそれでいいのだ。

 文章は先ほど書いたように頭韻がこれでもかというほど踏まれているのと、短い文でフラッシュの様にパパパッと情景を描写してとてもリズムがいいが、ここは好みが分かれるところであろう。しかし、万人の一致するところは、語彙の豊富さと最高にゲスで下品で熱に浮かされたような文章であることだ。これが最高にイカしている。暴力小説、ノワール小説を愛する心を持つ諸氏なら分かってくれると思うのだが、こういう文章というのは少しセンスが無いだけでただのカスに成り下がる。しかしエルロイの言語センスが絶妙(なのとおそらく訳者の人が頑張ったおかげ)でこの小説を最高にしている。

 出てくる犯罪はビザール犯罪が多く犯罪者は完全にイカれている。犯罪者/被害者共にその死に方は無残だ。ゲイと有色人種は明らかに差別され抑圧されている。おそらくこの小説の背景からアメリカの抱える根深い人種差別や、いなくならない汚職警官に著者の生い立ちなどに思いを巡らせる事も出来るのだろうが、そこを無理に意識して読むのではなく、私としてはこの文章の流れに身を任せてみて欲しい。脳に入ってくる情報をそのままスパークさせて欲しい。貧弱な私の言語表現では、エルロイを語るに足らないが、例えばデヴィッド・フィンチャーやクエンティン・タランティーノの映画が好きだったら読んでみて損はしないと思う。音楽でいえばスラッシュメタル。SLAYERな感じがした。

 以上、つらつらと書いてみたが、伝えきれないこの感覚がもどかしい!とりあえずちょっとでも興味を持ってみた人は巻末の杉江松恋さんの解説を読んで欲しい。誰にも負けないとんがった知性と感性が無くても(あるにこしたことはないが)アドレナリン全開で読めるはずだ。



 えー、というわけで、最近読んだ中でも特にハマったものを2冊しょうかいしてみましたが、いかがだったでしょうか?本当は『年間日本SF傑作選 結晶銀河』についても触れたかったのだが、集中力が切れてしまった(笑)では、またお会いしましょう!
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