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日本SF短編の最前線、大森望責任編集『NOVA4』の感想

2011年06月01日
 さてついに6月を迎えてしまいましたね・・・。本日6月1日は関西や東日本では土砂降りの雨だったり肌寒かったりと、季節を逆戻りしたような天候だったらしいですが、ここ福岡では半袖のT-シャツ1枚でも十分なほど暑かったです。とまぁ、時節の挨拶もそこそこにして、今日もボチボチいってみましょう!

・大森望責任編集『NOVA4』(河出文庫)

 毎回がらりと違う顔ぶれで、がらりと印象の違うアンソロジーをお届けする━━それが<<NOVA>>シリーズの編集方針です。この『NOVA4』は、七色の変化球を主体にした変幻自在の1冊。伝奇、ファンタジー、ホラー、ミステリーなど、バラエティ豊かな9編をごゆるりとお楽しみください。
  ━━大森望 (見返しより引用)


 SFアンソロジー『NOVA』シリーズも今巻で通算4冊目である。1巻から大森望色ともいえる特色あふれる短編を収録しているこのシリーズには、個人的に大森望さんのお薦めに絶大な信頼を置いている私にとって毎度毎度まさに御馳走である。今巻の収録作家を掲載順に羅列すると、京極夏彦・北野勇作・斉藤直子・森田季節・森深紅・林譲治・竹本健治・最果タヒ・山田正紀の9人である。ホラー界の巨匠にライトノベルの新進気鋭、詩人にSF界の重鎮まで物凄くジャンルの幅の広い作家陣である。人脈が広いのか人望が厚いのか(どちらもだろうが)、大森さんの手腕には驚嘆するばかりである。

 今回は短編集なので、個人的に気にいった作品をいくつかピックアップして紹介していきたいと思う。


・北野勇作「社員食堂の恐怖」
 『NOVA1』に収録されていた「社員たち」に続く、社員シリーズ(?)である。唐突に、出口のシャッターが開かなくなり、あらゆる外部との連絡/関係が途絶えてしまった、とある会社の社屋。突拍子もないことが好きで”肝の据わった人材が好き”というワンマン社長の仕業かと途方にくれる社員たちだったが、一旦考えが落ち着き、社長に監視されてるかもしれないから堂々と振舞おうと腹を据えると、夕時なので空腹になってきた。社が誇る”万能自動調理器”が置かれている社員食堂へみんなして赴き、それぞれが食事を平和に済ますのであった。あのおぞましい事件が起こるまでは・・・、といったストーリー。
 やはり北野さんのこういったSF設定を生かし、ギャグとブラックユーモアを交えた短編は本当に好きだ。読者を小説の世界に引き込んでオチまで全く引き離さない文章は、著者の落語好きが、良い意味で、モロに反映しているのだろうなぁ。オチは凄く思索的です(笑)

・森田季節「赤い森」
 先日、ハヤカワJAから『不動カリンは一切動ぜず』を刊行し、SFマガジン7月号でも”2010年代を担う次世代型作家”として紹介されている著者の考古学SF。日本史研究の修士課程に所属する主人公・西野の研究室に「自分の持ち山(奈良と和歌山の県境付近)から壁画のある古墳が出た。調査に来てくれ」という電話がかかってきた。修士論文に行き詰まってるようだし気晴らししてきてはどうかと担当教授に薦められたので、西野は特に期待もせずフィールドワークに出掛ける。そこで西野が見つけたのは本来なら圧倒的多数が九州地方にある装飾古墳であった。すわ!新発見か!とはやる気持ちを抑え古墳内を調査すると、どうも壁画がおかしい。古墳が造られた時代には見られないはずのモチーフが描かれているのである・・・、といったストーリー。
 著者の来歴が活かされている考古学・ミーツ・SFという設定が本当に楽しめた一作だった。ひょうきんとも言える展開にはウキウキさせられたし、結末はどっちともとれるが、個人的には夢がある方を取りたいです(笑)

・林譲治「警視庁吸血犯罪捜査班」
 林譲治さんといえば、「AADDシリーズ」をはじめ、どちらかというとハードSFで知られていると思うが、今作はなんとSFミステリに挑戦である。先進国を中心にIDタグが導入されるようになった近未来、世界規模で身分を詐称している謎の人々を見つけることになった。彼らはなんと吸血鬼で、身分を偽り社会に潜んでいたのであった。様々な排斥運動や互いの間に確執があったが、研究が進むにつれ彼らが高い技術力を生理学的に有していることが判明した。これに目をつけたのが労働力の欠如から国際競争力を失くした日本であった。しかし受け入れに関しては根強い国民の反発があったので、警視庁に吸血鬼専門の捜査機関、通称・吸血犯罪捜査班を設けるのであった・・・、というのが大筋の世界観。
 ここまでの設定も、さすがとも言うべき説得力を持って、帯に短くもなくたすきに長くもないちょうどいい塩梅で緻密に書かれている。この冗長にならないギリギリのところをいつも私のような馬鹿にも分かるように書いてくれるので林さんは大好きな作家さんである。
 ストーリーはこの世界で殺人事件が起こったのを吸血捜査班がなんのかんのあって解決するという風に進んでいく。ミステリーはあまり読んだことが無いので、参考にならないかもしれないが、「この後、どうなるんだろう?」とか「はは~ん、さてはこいつが犯人だな?」と考えながら読むことが出来た。


 さて、全9編のうち、特に気に入った3作を紹介したが、いかがでしたでしょうか?他の掲載作に、Twitterでの『NOVA4』の感想の中で一番人気が高く、長編化も出来る設定をふんだんに詰め込んだという山田正紀さんの「バッドランド」、退廃的エロスに身を焦がす王妃を描いた竹本健治さんの「瑠璃と紅玉の女王」などなど、どれも面白い作品ばかりですよ!
 個人的に今後に期待する作品は、ミリタリSFとバチガルピなみのポストヒューマンSFかなぁ。



 というわけで、今回の記事はここまで!何かご意見等ございましたら、ツイッターのリプライでもコメント欄にでもお気軽に書きこんで下さいね!それではまた次の記事で...!
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