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宇宙怪獣大決戦!?小林泰三『天獄と地国』の感想

2011年05月31日
 さて5月も終わり6月になってしまいましたね。年始に立てた目標は達成できましたでしょうか?私はできていません!もう今年も残り半分かと思うと、なんだか月日の流れる速さにビックリする限りでございます。というわけで、今回も行ってみましょう!

・小林泰三『天獄と地国』(ハヤカワ文庫)

頭上に地面、足元に星空が広がる世界。人々は僅かな資源を分け合い村に暮らしていた。村に住めないものたちは「空賊」となり村々から資源を掠め取るか、空賊の取りこぼしを目当てにさまよう「落穂拾い」になるしかない。世界の果てにもっと人間の暮らしやすい別天地があると確信した、落穂拾い四人組のリーダー・カムロギは、多くの敵と生き残りを賭けた戦いを繰り返し、楽園をめざす旅を続ける。



 小林泰三さんの久々の長編小説である。短編集『海を見る人』に収録されていた同名作品の長編化である。読み始めたあなたはまずトンデモな設定に驚かされるだろう。上記の引用を読んでもらえれば分かるが、この世界ではなんと重力が逆さまに働いているのである。この事に関する描写が細かく、まるでその世界が本当にあるかと錯覚させるかのように書かれているので、頭の中の常識が「あれ?重力ってなんだっけ?」と狂ってしまいそうになること必須である。またSF作品でみせる小林さんの深い科学知識も手伝って、この小説の世界に感じる"リアルさ"は真に迫っている。

 そんな狂った世界で、空賊が略奪し終ったあとの村に赴き、残った生活必需品や電子部品などを盗むことで命をつなげているカムロギ率いる落穂拾い4人組。無論いつもギリギリの所で生きているので贅沢などは出来ない。その中の一人、カリティは”地国”という存在を信じていた。”地国”とはこの世のどこかにあるという重力が反対に働く所、つまり鉛直下向きに重力が働く場所のことだ。しかしそんな主張をするカリティを残りの3人はおとぎ話を信じる女だと馬鹿にしていた。しかし、ある時カリティが宇宙船を着陸させた場所の岩盤が崩落する事故が起こってカリティは”天獄”、つまり空へと落ちていってしまう。その際彼女は”地国”の存在の根拠として主張していた巨大生物を崩落した岩盤に最後に発見する。この発見に驚いた一行であったが、それぞれの宇宙船が限界に達し、空賊も迫っていたため、それを調べるために巨大生物らしき物体へと単身カムロギが無理矢理乗り込む。するとその巨大生物は人をその中に取り込み操縦者とすることで動く生物型宇宙船であることが判明した!

 この生物型宇宙船(カムロギがアマツミカボシと名づける)に乗りこむことで難なく空賊を退けることが出来た一行は、カリティの説が正しかったことを確信し、”地国”へと赴く長い旅をつづけるのだが、そうやすやすと物語が片付かないのが小林さんの小説である。この世界には3つの国(といってもたかが知れているが・・・)があり、その国それぞれがそれぞれの怪物を所有していたのである。4体目の怪物の出現の報を聞いたそれぞれの首長はパワーバランスが崩れる事を恐れ、アマツミカボシをそれぞれが所有する怪物を持って退治しようとする。そう、これからがこの小説最大の見せ場、超巨大宇宙怪物大決戦が始まるのである!小林さんはウルトラマンが大層お好きだと聞いたが、もう取っ組み合いからブラズマカッターに分身まで、まさにやりたい放題の大決戦が繰り広げられるのである。こう書くとコメディ色が強いのかなと勘違いされるかもしれないが、その対決も「宇宙で戦う怪獣がいたら絶対こんな感じなんだろうな~」と納得できる説得力がある文章で冷静にSFしているのでご安心を(笑)

 これ以上、あらすじを語るとネタバレになってしまうので控えるが、やはり小林泰三さんの作品は面白いなぁ。冷徹でグロテスクな描写、幸せとは程遠い環境の中で生き抜く人々に訪れるあっと驚く結末。この魅力を伝えるには私の語彙/表現力では無理なのが本当に悔しい!

 ホラー作品でしか著者を知らなかった人、先日の『世にも奇妙な物語』で放映された「ドッキリチューブ」の原作者としてチラッとだけ聞いたことのある人、そういった人たちへの入門書としては少しレベルが高いかもしれないが、センスオブワンダーが存分に味わえる作品である事は保証します!


 というわけで、今回の記事はこのあたりで!また次の記事でお会いしましょう...!
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