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最近読んだ本の感想 vol.4

2011年05月16日
 さて、前回の更新からまた日にちが開いてしましました。更新したい欲はあるのですが、それを上回る読書欲のせいで、レビューしたい本がドンドン溜まる→やる気無くすの悪循環に陥っておりました。これじゃやっぱり、いかん!俺が先人たちに教えてもらったように少しでも、お財布のひもが固くなった昨今、参考になる感想を書かなければいけないのではないか、との義憤に駆られましたので更新します。石を投げないでくださいっ!


・犬村小六『サクラコ・アトミカ』
 ガガガ文庫で『とある飛行士への追憶』、『とある飛行士への恋歌』を発表し絶大的な人気を集めた犬村小六氏が星海社の「最前線」という新たな試みの中から発表した書き下ろし長編。(ちなみに、『とある飛行士への追憶』は劇場アニメ化が決定している)同時に出版された「最前線小説」の著者としては、『魔法少女まどか☆マギカ』で今をときめく虚淵玄氏や、元長柾木氏が参戦されている。
 空を天蓋で覆われた畸形都市・丁都にある高空庭園に囚われたサクラコ。阿岐ヶ原の内親王である彼女は、彼女を見る者それぞれの美しいという概念が具現化される量子論的な美貌を持っており、間近で見たものは己の獣性を解き放たずにはいられなくなるか、ただただ平伏するかのどちらかで不便は無いが張り合いの無い生活を送っていた。しかし、その美貌に目をつけた人物がいた。丁都に君臨するマッドサイエンティスト、オルガである。オルガは不可能を可能にする理不尽なまでの能力を持っているが、それ故に彼は今生きている世界に飽き飽きしており、こんな世界に生きてるみんなは可哀想だから滅ぼしてしまおうという考えを思いつく。そんな折、サクラコの異常なまでの美貌を聞きつけたオルガは「サクラコの美しさが世界を滅ぼす」という一文に魅了され、オルガはサクラコを原動力にした原子力兵器を組み上げ世界を滅ぼそうとする。それを嫌ったサクラコは高空庭園から飛び降り自殺を図るが牢番でもあり、オルガによって創造された丁都最強の人型生物兵器であるナギがそれを決して実行させない。虜囚の身で退屈に飽いていたサクラコは自分をないがしろに出来ないことを逆手にとってナギにあれやこれやと無理難題を突き付けだす。そのうちに怪物であるがため、サクラコの美しさに理性を飛ばさないナギとサクラコは、互いの出自に似たものを見つけ出すことで次第に打ち解けていき、恋に落ちる。ついにサクラコを丁都から脱出させ2人で生きていこうと逃走を図るもののオルガに発見されてしまい・・・。
 以上が物語の核心までのあらすじである。犬村氏得意の王道の「ボーイ・ミーツ・ガール」もので、単純に書くと「悪い魔法使いに囚われた姫を騎士が助けに行くという」というののバリエーションなのだが、犬村氏の精緻で情景描写力の高い文章のおかげで全く古臭さを感じられず、やはり王道は各あるべしと思わせられた。どこか暗く破滅的な終末的思想が行間に満ちているのだが、ラストの展開は熱く滾り、想像力で世界を変え、描いた未来を見事に勝ち取った2人の最後のセリフでは全身が総毛立った。また、この本は装丁が素晴らしい。フルカラーのイラストも雰囲気がよく出ていた。
 最後になるが、この星海社の小説は、自分が確認した限り、ラノベの棚にも文芸の棚にも置いていなかったので、本屋さんで購入される際はよく探してみましょう(笑)


・ミランダ・ジュライ『いちばんここに似合う人』
 twitterの投票で2010年にいちばんおもしろかった作品を選ぶ、”Twitter文学賞2010”で見事に海外部門第1位を獲得したこの作品。ミランダ・ジュライという人をまったくもって知らなかったのだが、著者来歴を見ると、1974年生まれで、映画監督/パフォーマンス・アーティスト/作家と多岐にわたった分野で活躍されているマルチな才能を持った女性らしい。
 この本は長編では無く、16の短編からなる短編集である。それらに共通するテーマは、”孤独で不器用な女性の等身大の経験”を綴ったものと言えるかもしれない。実は、自分はイマイチこの作品にはノれなかった。しかし、確かに面白いなと思った作品がいくつかあったのは確かなので、それについて紹介したいと思う。
・「水泳チーム」
 22歳でカラッポな気分でちっぽけな町の中に暮らしていたマリアが、海も川も湖もプールさえ無い土地でお年寄り3人に水泳をコーチするという話。読んでいて思わず笑ってしまう方法をあれやこれや試して、週に2時間だけ老人3人に泳ぎ方を教えるのだが、優しい口語体で書かれた文章のおかげか、あたたかい気持ちが胸に込み上げてきた。たった8ページしかない短編なのだが、伝わってくるものは充分にあった。
・「ロマンスだった」
 ロマンス体質になるために自己啓発セミナーに参加した女の話。乳がんの会が乳がん患者のためのもののように、ロマンス体質になる会はいままでロマンスを経験したことの無いいわゆる冴えない女性ばかり。その会の中で”わたし”は同じく出席していたテレサが床にへたり込んでいるのを見つける。彼女を慰めるうちに、泣きあって抱擁し合った2人はじゃあねと体を離す。するとどうだろうか、長らく忘れていた女性的な感情を取り戻し、晴れ晴れとした気分で明日へと向かう。なんというか、日影で生きてきた人にしか分からないであろう感情が行間にあふれており、なんだかわからないが気に入った作品。
・「モン・プレジール」
 意味のない事柄を省き意味のあることだけをするのを信条にした特別に仲が悪いことはない普通の夫婦の話。ともに、仏教や内的風景に興味を持ち、禅をしたりしている。しかし物語が語られているのを追うと妻の方は物足りなさを感じていることが分かる。そこで、映画のエキストラに夫婦で出演してみることにする。そのエキストラをしている最中に妻は悟ってしまう。もう私たちは終わりなんだと。しかしそこに暗い気持ちは無い。むしろ、明日への張り合いさえ感じられる。
 とりあえず、気にいった3つの短編の簡単なあらすじと感想を書いてみたが、全短編に対して言えることなのだが、作品で表現していることが物凄く観念的な事なので、自分の文章力では説明しづらい。なので、ヘンな小説の翻訳をすることで有名でこの本の翻訳者でもある岸本佐知子さんの素晴らしいあとがきから少し抜粋したいと思う。

 この本に出てくる登場人物たち(略)、彼らはみな孤独で不器用だ。人生の理想と現実のギャップを埋められないまま自分の生の中に閉じ込められ、世界に対してしっくりこない気分を抱えて生きている。
     (中略)
彼らの試みが報われることは少ない。多くの場合、人物たちは物語の最後でふたたび自分の孤独と否応なしに向き合うことになる。けれども読みおわったときに私たちが受ける気分は、絶望とは違う何かだ。彼らが孤独の底で誰かとつながりかけた、その瞬間は火花のように彼らの生を照らし出し、彼らを前とはほんの少し違う場所に連れていく。そこには、「人はみな孤独だ、だが孤独を通じてつながることができるのかもしれない」という裏返しの希望が読み取れるような気さえするのだ。

 正にこれこそが自分の言いたかったことであるとあとがきを読んで衝撃を受けたので抜粋させていただいた。私的には、伊集院光さんの「深夜の馬鹿力」を面白いと思える女性にお薦めしたい。


・平山夢明 他著『怪談実話 FKB話 饗宴』
 平山夢明氏が音頭取りとなって怪談実話の本を作ろうという企画、不思議で怖くて不気味な話、略してFKBの最新刊である今巻は、ベテランにグラビアアイドルまで怖い話が好きという共通点を持った16人の著者の短編からなる実話怪談短編集である。実話怪談なのであらすじは書けないが、特に自分が怖いな不気味だなと思った作品をリストアップしたい。
 岡本美月「フェルトの熊」/黒史郎「ぺそぺそ」/小鶴「約束の痕」/田辺青蛙「めの字小屋」/牧野修「姉の部屋」/黒木あるじ「大黒」/平山夢明「またがり」
 どの作品にもゾッとさせられたが、特に上記の作品には震えさせて貰った。間違いなくナンバーワンは、何か自分の記憶の蓋が開きそうになった黒史郎さんの「ぺそぺそ」である。読後のざわざわした感じ、物音や戸締りが気になり、静寂と闇が怖くなる感じが欲しくて毎度読んでいるのだが、見事にそれを与えてくれた。もはやジャンキーの領域である(笑)
 最後にどんな感じか分からない方のために平山夢明氏の前説から少しばかり引用させてもらう。

 ひと口に怪談実話と申しましても、それはそれ執筆者ひとりひとり【怖ろしい】を思うポイントや深さは様々でありまして、解釈もいろいろ。ある人は実にオーソドックスな怪談をおそろしいと感じて仕上げてきたかと思ったら、ある方は現実とも夢ともつかむような怪談を披露し、はたまた別の作家は現実の亀裂から生じたような誠に不気味な怪談をものしてきたりと、怪談のバラエティ・パックになれば最高だと思っていた、こちらの期待に違わぬ一品が勢ぞろいしたのであります

平山夢明氏にここまで言わせるのだからオモシロ怖いに決まっているのである。怖い話が読みたいなと思ったら是非買ってみるといいと思う。




 さて、まだまだ読んだ本はあるのだが、今日の所はこれくらいで勘弁して下さい!これからも色々な本を読んでいきたいなぁ。感想などありましたらコメントの方でよろしくお願いします。ツイッターのリプライでも構いません。お待ちしております。それではまた、次の日記で...!
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