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最近読んだ本の感想 vol.3

2011年04月05日
 いやぁ、長らくほったらかしにしてしまって申し訳ない。二次絵サイトならまだしもレビューサイトで1か月も放置ってどういうことよ!とどこかから声が聞こえたので更新します。石を投げないでください!


・トマス・H・クック『沼地の記憶』
様々な階級の人が住むレークランド。そこにあるレークランド高校で「悪について」という特別授業を行っている主人公のジャック・ブランチはそのクラスを受講する女子大生殺しの殺人犯を父に持つエディ・ミラーに興味を持ち、授業のレポートテーマ「悪人について書く」というものに自分の父親の事を書いてみてはどうかと薦める。それは彼が自らの出自と決別できるのではないか、そしてこの子は大学に進んで華々しい未来が開けるのではないかという期待を持ったからであった。エディはレークランドの特に”ブリッジズ”と呼ばれる貧しい人たちが住む地区の出身で、ジャックはプランテーション地区と呼ばれる代々の名士が住む地区の出身。ジャックは父に対してコンプレックスを持っており、同じく父親に違った形でもコンプレックスを持つ自分の教え子がそれを克服することで自分もまた克服できると考えた結果からの行動であった。しかし、ジャックの言うとおりに動いていたエディは自らの意思で行動を始める。しかし、様々に入り組んだ人間関係と貧民に対する差別などが折り重なりエディを取り巻く状況は下り坂を転がるボールのように勢いをつけ悪化していく・・・。
 この小説は時系列順に書かれているのではなく、過去のフラッシュバックが多用されているのだが、それが物語にすごく深みを与えていると思った。とにかく陰鬱で寂寥感があるというかなんというか表現しづらいのだが、没入感が凄い。自分も事件にかかわっていたかのように錯覚させてくれる。アルベール・カミュの『異邦人』を読んだ人なら分かると思うが、あの小説に漂っていた雰囲気と似ている。読後はどうしてこんなことになってしまったんだろう・・・とちょっと落ち込んだ。それほど入れ込むことができる一冊である。「父親」・「宗教」・「悔恨」・「倫理的に生きる事」の4つを頭に最初から入れて読むとより深く理解できるかもしれない。



・牧野修『死んだ女は歩かない(2)』
 メディカルワームという医療用のあらゆる臓器を代用できる技術が発達したおかげでほとんどの病気が治療できるようになったはずだったが、ある日突然メディカルワームに変異体が生まれ、人に感染するようになった。男は感染した状態で過度のストレスに瀕すると体が変貌し怪物となる、よしんば発症しなくても死ぬとゾンビとなって蘇ってしまう。女が感染すると”チェンジリング”と呼ばれる異能の力を持つ存在になってしまう。この状況を重くみた政府は「千屍地区」という特区を作り感染者を強制的に収用することに決めた。当然そこは半ばスラムと化し世界で一番治安の悪い所との悪名を得ることになった。その千屍地区を統括するのは「疫病監視機構」でありその中に属する千屍地区で起こる死人のゾンビ化、男性罹患者が異形化した際の始末、”チェンジリング”が攻めてきた際の防衛などを司るのが疫病監視機構警備課に属する”チェンジリング”の女性のみで構成された特務部隊なのである。
 最近のトレンドとして無垢な少女が責任を負わされ悪と闘うというのがあるが、本作で活躍するのはそれぞれがハードな経験をして肉体的にも精神的にも強くなった美しい成人女性、強い女なのである。腹に開いた地獄に通じる穴から様々な剣を取り出し接近戦で戦う雛乾月、娘のために死ぬことはできない意思を持つ怪力で音波を操る能力を持つ輝十字、お調子者だが狙撃の天才で自他問わず傷を転送する能力を持つ無苦の3人からなる特務部隊が、大暴れするのだがそれぞれが職務に忠実であると同時に互いを想いあってるのが最高に面白い!ゴア表現もこれ以上するとうざったくなるラインのギリギリを責めており、牧野さんらしい描写も大変すばらしかった!敵もこっちの常識が全く通じない平山夢明さん言う所の”ドットの荒い”奴で、虫唾が走る最低な人間を描いておられる。無垢な少女が戦う物語に飽いてきた人は読むべし!



・小川一水『群青神殿』
 海洋資源であるメタンハイドレードを商業のために探す母船”えるどらど”に搭載された中深海長距離探査艇”デビルソード”に搭乗する鯛島俊機と見河原こなみの2人はある時、原因不明で沈没した自動車運搬船の捜索にあてらる。何故か海保の護衛がついていることに疑問に思いながらも捜索を開始すると、謎の生物に海保の船が沈められてしまう。これを機に世界各地の海を航行中の船が続々と謎の生物に沈められてしまう事例が多発する。事態を重くみた世界各国は調査を開始し、謎の生物”ニューク”が多く悲惨でいられると考えられるポイントをフィリピン近海で発見する。そこの調査にお鉢が回ってきたのがなぜか商用船”えるどらど”であった。各国の思惑が交わる中、”デビルソード”は無事に"ニューク"の存在を確認し生きて帰ってくることができるのか?人間ドラマにも重点を置いた海洋SF作品。というのがだいたいの粗筋。
 海洋SFといえば未知の生物といっていいほどこの2つの相性はずば抜けてよいと個人的には思っている。そこに小川さんの書く登場人物間のパワーバランスや感情の機微があわさってとても面白く読むことができた。最近の小川さんの作品と比べると見劣りしてしまうがそれでも海に対するドキドキワクワクする感じを想起させてくれる。



・黒史郎『幽霊詐欺師ミチヲ』
 女に騙され借金まみれとなりにっちもさっちも行かなくなったミチヲは自殺をしようと界隈でも有名な心霊スポットに出掛ける。そこになぜか犬が寄ってきて、見つめられると死に難いからあやしてやっていると、喪服でネクタイだけを緩めた姿のカタリと名乗る謎の男に、「チャンスをやる。選択しろ。このまま死ぬか、それとも俺に買われるか」とミチヲが借金していた同額をキャッシュで差し出される。人生に絶望しきって死ぬことを決断したミチヲだったが、人間誰でもそうなようにチャンスをチラつかされると生きたいと願ってしまう。そしてミチヲは代価としてある仕事を頼まれるというか強制されるのだが、その仕事というのが幽霊を騙して金を巻き上げるという驚天動地の仕事だった!
 ここまでがまぁだいたい前半の粗筋で、その後、生前そこそこの額のお金をためていたが男に騙され不遇の死をとげた女幽霊にたいして結婚詐欺を働いたり、ある理由で一家離散となりその家で果てた子供の自縛霊から土地をだまし取り不動産を転がしてがっぽがっぽという2つの話が続くのだが、これが滅法面白い!幽霊の姿や霊障のグロさは角川ホラー文庫の文字に負けていないし、死んではいても元は人だった存在を騙すことに抵抗を感じるミチヲの頑張りとその結果が面白いやら、切ないやら、自業自得だわでとにかく面白い!ホラーはちょっとという人でもゴア表現には免疫があるよという人は読んでみると吉。ぶっ飛んだ設定をキチンと黒さんが書かれています。



 というわけで、本の感想を書いてみました。世間は不況、地震に原発事故と大変息苦しいですが、こういうときだからこそ読書してみるのもいいと思います。それではまた次の日記で...!
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